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2026.03.12
お知らせ
2026年1月30日、東京都内のホテルにおいて、公益財団法人日本フィランソロピック財団(所在地:東京都港区、代表理事:岸本和久)による、第2回「がん研究フロンティア基金」研究助成の贈呈式が執り行われました。
本基金は、ある一人の篤志家(寄付者)が抱く「がんを治る病気にしたい」という切実な願いを形にしたもので、がんの新たな予防・診断・治療に資する、若手研究者による基礎研究への研究助成を行うものです。基金はアドバイザリー・ボード委員5名の助言を受けて設計・運営されており、選考委員会は医師・医学研究者のほか生命科学研究者、医学ジャーナリスト、患者会といった多様な背景と専門性を持つ委員により構成されるという、ユニークな体制をとっています。
第2回の公募では、応募総数98件から研究課題11件が採択されました。助成期間は2025年10月~2027年9月、助成金総額は113,230,808円(内訳:直接費合計104,500,000円、間接費合計8,730,808円)です。
贈呈式の冒頭、当財団代表理事の岸本 和久が「今回も非常に狭い門を突破された方々が、ここに集まった」「今回の助成が、将来の研究の礎となることを心より祈願している」と挨拶を述べました。

岸本 和久 日本フィランソロピック財団 代表理事
本基金のアドバイザリー・ボードの副委員長を務める国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)理事長の中釜 斉氏は、基礎研究・シーズ開発の重要性を強調しつつ、本基金の意義を説きました。
「助成課題を見ますと、多様な分野の非常に優れたユニークな研究が揃っている。基礎的なコンセプトの新規性・優位性を確保して研究を深化させることが、将来、国民に届く社会実装の源となる。勇気を持ってチャレンジし、グローバルにアピールできる成果を創出してほしい」と述べました。

アドバイザリー・ボード副委員長 中釜 斉 先生(国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 理事長)
贈呈証を受け取った11名の研究者は、本基金への深い感謝を述べた後、自己紹介および研究課題の説明を行いました。(以下、五十音順)
①家里 明日美 氏 (公益財団法人 がん研究会)
研究課題名:乳癌リンパ管侵襲の病態理解に基づく、治療を要する症例選択法及び新規治療戦略の開発
採択者挨拶:乳腺内分泌外科医として約10年間、臨床で患者さんと向き合ってきました。その中で抱いた疑問から着想を得て現在取り組んでいるのが「リンパ管侵襲」の研究です。従来、がんは自らリンパ管へ入り込むと考えられてきましたが、「リンパ管内皮細胞が網を形成してがんを運ぶ」という新たな病態仮説に辿り着きました。本助成を通じて、リンパ管侵襲の基盤原理の解明と、術前に転移リスクを予測する診断法の確立を目指してまいります。
②大原 悠紀 氏 (国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学)
研究課題名:SERPINB3を基軸とした膵管腺癌におけるがん―間質相互作用と代謝サブタイプの包括的解析
採択者挨拶:私は病理学者・分子生物学者として研究を行っています。米国国立衛生研究所での5年間の留学を経て、現在は名古屋大学高等研究院で、テニュアトラック研究者(将来、独立した研究グループを主宰することを目指すポジション)として活動しています。膵臓がんの代謝変化が、がんの周りの細胞(間質細胞)に与える影響を解析し、将来的には病理診断への応用を目指しています。留学中に築いた国際的な研究ネットワークと、高等研究院の学際的な環境を活かして研究を進めていきます。
③神谷 知憲 氏 (公立大学法人 大阪公立大学大学院)
研究課題名:MASLD関連肝細胞癌における疲弊型T細胞の新規機能の解明と診断・治療への応用
採択者挨拶:普段は、腸内細菌が肝疾患に及ぼす影響などを研究しております。今回は、脂肪性肝炎(MASLD)ががん化に至る過程で、T細胞が自身の細胞を傷害することで発癌を誘発しますが、発癌後も同じT細胞ががん細胞を攻撃し続けるという、生体のパラドックスとも言える慢性炎症と発癌との関係を研究しています。基礎研究を通じて将来の治療に繋がれば本望です。
④熊谷 尚悟 氏 (公益財団法人 がん研究会)
研究課題名:神経内分泌がんにおけるT細胞誘導療法抵抗性の詳細解明と新規治療開発
採択者挨拶:本助成が決まった後、この1月からがん研究会へ移り、自身の研究室の運営を開始したばかりです。このタイミングでの採択となり大変光栄です。神経内分泌がんにおけるTCE(T細胞誘導抗体)療法の耐性機構を解明し、神経内分泌がんではない患者においても応用できる基礎的な知見を構築していきたいです。
⑤栗本 遼太 氏(国立大学法人 千葉大学)
研究課題名:mRNA修飾に基づく翻訳出力不均一性の可視化とがん治療標的化技術の開発
採択者挨拶:10年間、腫瘍内科医として診療にあたり、2016年に基礎研究者へ転身した際、師から「まず、がんを忘れろ」と言われ、純粋な基礎科学から再スタートしました。ノーベル賞で脚光を浴びる前から「RNA修飾」に着目してきました。偶然にも、がんの不均一性とRNA修飾が結びついた発見があり、運命を感じています。『RNA修飾とがんといえば栗本』と覚えていただけるよう、様々な分野に還元できるような技術開発を目指します。
⑥近藤 泰介 氏(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学)
研究課題名:代謝ストレスによる翻訳制御機構の解明とがん免疫療法への応用
採択者挨拶:2019年から米国国立衛生研究所で研究を続けており、2025年5月に帰国しました。帰国してすぐに申請し、採択されたことは日本での研究活動再開に向けた大きな励みになります。血液がんでは有効なCAR-T療法が、なぜ固形がんでは効かないのか。栄養の乏しいがん微小環境におけるアミノ酸代謝シグナルに着目し、固形がん克服の鍵を探ります。
⑦田中 愛 氏 (国立大学法人 信州大学)
研究課題名:『リバースOnco-Cardiology』による革新的がん転移制御戦略の確立
採択者挨拶:大学院時代から循環器を専門としてきました。高血圧や糖尿病などの血管ダメージが、がんの転移を促進しているのではないかという発想でリバースオンコカルディオロジーという考え方を提唱しています。今回、がん研究の文脈で採択されたことで、自分自身の研究の道筋に自信を持つことができました。がんと循環器両方を介して新たな知見を出していきたいです。
⑧中山 淳 氏 (地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター)
研究課題名:がん休眠シグナルの包括的理解とがん再発予防戦略の確立
採択者挨拶:理工学をバックグラウンドに持ち、がん遺伝子研究の第一人者らのもとで学んできました。がん細胞における増殖の仕組みは分かってきても、がんがなぜ眠り(休眠)、突如再発するのかは未解明です。この4月から自身のラボが立ち上がる予定です。助成金も活用してより成果が出せるよう、運営をしていきたいと思います。
⑨野村 アニラ 氏 (国立研究開発法人 理化学研究所)
研究課題名:Runx3変異体を用いた疲弊耐性型CAR-T細胞療法の開発
採択者挨拶:がんを攻撃する免疫細胞(CD8T細胞)は、戦う中で「疲弊」し、力を失ってしまいますが、中には疲弊しにくいタイプのT細胞があり免疫治療にも効果を発揮します。その仕組みを解明し治療にいかしたいと思っています。今回の支援を励みに研究成果を将来の医療へとつなげられるよう誠実に研究開発活動に取り組んでまいります。
⑩松本 知訓 氏 (国立大学法人 大阪大学)
研究課題名:癌の芽を摘む先制医療の開発と治療最適化で挑む難治性多倍体癌の克服
採択者挨拶:2年前に独立し一から立ち上げ、ようやくメンバーも増えるというこの時期に、この助成をいただけたのは本当に心強いです。大学院留学時代から、「がんの多倍体化(染色体の倍増)」という、現代では着目されにくい分野を対象に、多倍体化が難治化や薬剤耐性化につながっていると想定して研究を続けています。将来、臨床現場で『倍数性』という言葉が日常的に飛び交う未来を創りたいです。
⑪村居 和寿 氏 (国立大学法人 金沢大学)
研究課題名:免疫非応答性がんにおける腫瘍免疫環境の再構築と革新的治療戦略の創出
採択者挨拶:「Cold腫瘍」と呼ばれる免疫治療の効きにくい腫瘍では、がん細胞が免疫細胞から栄養を奪い取り攻撃力を弱めることで薬の効き目を弱めています。この栄養経路をブロックすることで、「治せるがん」にすることを目指しています。治療法のない患者様に新たな希望を届けるため、研究に邁進する所存です。(当日、公務のため欠席されましたが、司会が村居氏のメッセージを代読しました。)

左上:村居 和寿 氏 後列左から:近藤 泰介 氏、松本 知訓 氏、栗本 遼太 氏、熊谷 尚悟 氏、神谷 知憲 氏、
前列左から:野村 アニラ 氏、中山 淳 氏、大原 悠紀 氏、田中 愛 氏、家里 明日美 氏
本基金アドバイザリー・ボードの委員から研究者に向け、温かな祝辞が贈られました。
アドバイザリー・ボード委員長の堀田 知光氏(国立がん研究センター 名誉総長)からは、本基金の設計思想の主な狙いは、新しい分野・領域を切り開く芽の発見、独立した研究者としてのスタートの支援であるとの説明に続き、励ましの言葉が贈られました。
「皆さんは、新しい分野を切り拓く『領域の開拓者』として選ばれました。2年間の助成期間を最大限に活用し、日本そして世界のがん研究をリードする存在になってください」

アドバイザリー・ボード委員長 堀田 知光 先生 (国立がん研究センター 名誉総長)
アドバイザリー・ボード委員の佐谷 秀行氏(藤田医科大学 腫瘍医学研究センター長)からは、ご自身が30代前半にアメリカで最初に研究室を持った時、ある基金からの助成があったからこそ、研究を始めることができた、という逸話が披露されました。
「私もかつて、あるプライベートな基金からの助成に救われました。その時の感謝があるからこそ、今も研究を続けることができています。当基金は、大切な方を失った一人の篤志家の方が、『がんを治したい』という一心で投じたお金により設立されました。その重みを心に刻み、社会を革新(イノベート)する仕事を成し遂げることが、最高の恩返しになります」

アドバイザリー・ボード委員 佐谷 秀行 先生(藤田医科大学腫瘍医学研究センター センター長)
南 砂氏 (読売新聞東京本社 常務取締役調査研究担当)は、がんは依然として解明しきれない難しい病気であるからこそ、多様な分野での基礎研究が重要と述べました。
「がんが『命を落とさずにすむ病気』になるという、そういう日のために、ぜひ力を尽くしていただきたい」

アドバイザリー・ボード委員 南 砂 先生(読売新聞東京本社 常務取締役調査研究担当)
贈呈式の後には情報交換会があり、参加した出席者全員が、世代、所属、専門分野を超えて互いの研究について熱心に語り合いました。
当財団一同、この度の採択研究課題に挑む若手研究者11名を応援するとともに、研究者の皆様が各研究課題から新しい学びを得、将来のがん医療の発展に貢献する成果を生み出されることを願っております。
基金ページ「がん研究フロンティア基金」
https://np-foundation.or.jp/list/gankenkyu.html
ニュース「若手研究者によるがんの基礎研究を応援する「がん研究フロンティア基金」第1回採択者へ研究助成金を贈呈しました。」
https://np-foundation.or.jp/information/000247.html
ニュース「第2回「がん研究フロンティア基金」助成先発表」
https://np-foundation.or.jp/information/000309.html
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